うさぎが見ていた
ふと何気なく空を見上げると
一本の糸が垂れていて
何だろうと思って手でたぐると
ビリッという音とともに空が裂けた
あまりに大きな音だったので
周りにいた皆が振り返り
その中の会社員が上を指差し
空が裂けてるぞと叫ぶと
あっという間に私の周りに
人集りが出来て口々に私を非難する
私が途方に暮れて泣いていると
その中の現場監督が進み出て
彼を責めても裂けた空は直らないと言い
皆が一応に静まったので
私はホッと胸をなで下ろす
それではどうやって
あの空を直すのかという話になり
皆に意見を募ったら
その中の少女が進み出て
世界一のお針子さんを
ロケットに乗せて打ち上げて
空を縫ってもらったらという案が出る
どうせ夢だと分かっていた私は
幸い裁縫が得意だったので
名乗り出ると一同から拍手が湧き出して
全会一致で了承された
そしてロケットの発射台に向かう飛行機の中で
とんだ災難にあったものだと
小さく溜め息をつくと
私は静かに目を閉じた
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